第3章 血統解説

ディープインパクト血統表

血統表の詳細はJBISで確認できます。
https://www.jbis.or.jp/horse/0000742976/pedigree/

1. 配合の狙い

― ベスト to ベスト ―


ディープインパクト 血統背景

サンデーサイレンス はアメリカ産の歴史的名種牡馬である。
現役時代はアメリカで走り、ケンタッキーダービーとプリークネスステークスを制して二冠を達成。さらにブリーダーズカップクラシックも制するなどGⅠを6勝し、エクリプス賞年度代表馬にも選ばれた名馬である。

引退後は日本で種牡馬入りし、日本競馬の血統史を大きく塗り替えた。
初年度産駒がクラシック世代を迎えた1995年から 13年連続リーディングサイヤー を獲得。日本の近代競馬は、この馬を中心に形成されたと言っても過言ではない。

ウインドインハーヘア はアイルランド生産、イギリス調教馬。
4歳時にはドイツGⅠ アラルポカル を制覇している。特筆すべきは、このレースを 受胎した状態で勝利している 点である。すでに繁殖牝馬としての役割を担いながら、牡馬の強豪 モンズーン らを破ってGⅠを制した。

血統表で特に注目すべき存在は、母父父 Lyphard(リファール) である。
現役時代はフランスの短距離路線で活躍し、ジャック・ル・マロワ賞、フォレ賞などGⅠを制覇。引退後はフランスとアメリカで種牡馬として成功を収め、ノーザンダンサー系の大きな一系統を築いた名種牡馬である。

Lyphardの血統的特徴は、

  • 芝適性の高さ
  • スピード

にある。

代表産駒には、後に欧州史上屈指の名馬となる ダンシングブレーヴ がいる。

また、Lyphard系は繁殖牝馬の能力を引き出しやすい血統としても知られており、日本競馬においても多くの成功例を生んできた。

日本競馬において サンデーサイレンスとリファール系牝馬の相性は非常に良い とされ、いわゆる“ニックス”として知られる配合の一つである。

代表例としては
バブルガムフェロー(朝日杯3歳S・天皇賞秋)が挙げられる。

血統表の詳細はJBISで確認できます。
https://www.jbis.or.jp/horse/0000274914/pedigree/

他にも

  • ロサード(オールカマーなど重賞5勝)
  • ヴィータローザ(セントライト記念など重賞3勝)
  • メイショウオウドウ(産経大阪杯・鳴尾記念)
  • ペールギュント(デイリー杯2歳S・シンザン記念)

など、多くの活躍馬がこの血統構成から生まれている。

また、リファール系そのものではないが、
有馬記念でディープインパクトを破った ハーツクライ も母母父にLyphardを持つ。

血統表の詳細はJBISで確認できます。
https://www.jbis.or.jp/horse/0000722158/pedigree/

さらに父系と母系が逆になる形ではあるが、
キングヘイロー も同じくLyphardの血を背景に持つ血統構成である。
血統表の詳細はJBISで確認できます。
https://www.jbis.or.jp/horse/0000294840/pedigree/

このように、サンデーサイレンスとリファール系の血の組み合わせは日本競馬で成功例が多い配合である。

さらに母系で注目すべき存在が、3代母 Highclere(ハイクレア) である。
エリザベス女王の所有馬として知られ、現役時代には

  • イギリス1000ギニー
  • ディアヌ賞(フランスオークス)

という欧州クラシックを制覇。さらにキングジョージでは名牝 ダリア の2着に入るなど、世界的な名牝である。

繁殖牝馬としても優秀で、産駒には

  • Milford(ミルフォード)
    プリンスオブウェールズステークス勝ち馬、日本で種牡馬入り

さらに

  • Height of Fashion

を通じて

  • Nashwan(ナシュワン)
  • Nayef(ネイエフ)

といった欧州の名馬を輩出する名牝系へとつながっている。この牝系は ファミリーナンバー 2-f に属する。
2-f は世界的に知られる名門牝系の一つであり、ヨーロッパ競馬では古くから多くの名馬を送り出してきた系統である。

ディープインパクトは、日本で生まれた競走馬でありながら、
こうした 世界的な名牝系の流れを受け継ぐ存在でもあった。

一方で、ディープインパクトの母系にはもう一つ重要な血が存在する。
それが祖母 Burghclere(バーグクレア) の父 Busted である。

Bustedはイギリスダービー馬 Crepello の産駒で、現役時代には
キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス
エクリプスステークス などを制した中距離の名馬である。

種牡馬としても成功し、代表産駒には

  • Bustino
    セントレジャーステークス、コロネーションカップなどを制したステイヤーで、
    1975年のキングジョージでは名馬 Grundy と歴史的な激戦を演じたことで知られる。
  • Mtoto
    キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス
    エクリプスステークス連覇 を達成した名馬で、
    引退後は欧州で成功した種牡馬となった。

このBustedの血は

  • スタミナ
  • 持続力
  • 底力

を伝える血統として知られており、ディープインパクトの母系に流れるスタミナの源泉は、むしろこのBustedの血に求めることができる。

つまりディープインパクトの母系は

Lyphardのスピード
Bustedのスタミナ
Highclereに連なる名牝系

という三つの要素によって支えられている。

スピードとスタミナ、そして牝系の質。
この三つを高いレベルで兼ね備えた、非常に完成度の高い母系と言えるだろう。

また、配合背景として重要なのは、当時のサンデーサイレンスの交配相手の傾向である。

サンデーサイレンスには、日本在来の牝馬よりも

  • ダンシングキイ(ダンスインザダークの母)
  • バブルプロスペクター(バブルガムフェローの母)

など、海外から導入された繁殖牝馬が多く配されていた。

当時は種牡馬・繁殖牝馬ともに、日本の血統はまだ国際的評価が高いとは言えず、輸入繁殖牝馬の方が評価される傾向にあったためである。

もっとも、
輸入繁殖牝馬の中でも GⅠ勝ち馬は非常に少なく、その中で 良血背景を持つGⅠ馬 であったウインドインハーヘアは特別な存在であった。

そのため、日本のリーディングサイヤーであったサンデーサイレンスが配されることは、むしろ 極めて自然な“ベスト to ベスト”の配合であったと言える。

また、競馬の血統を語る際には
「スピードは父から、スタミナは母から伝わる」
という格言がよく知られている。

もちろん血統の伝達はそこまで単純なものではないが、クラシック距離を戦う競走馬にはスピードとスタミナの両方が求められる。

サンデーサイレンス産駒は鋭い瞬発力や芝適性に優れる一方で、距離適性を安定させるためには母系からスタミナを補うことが重要と考えられていた。

そのためサンデーサイレンスには、当時ヨーロッパ競馬を席巻していた ノーザンダンサー系 をはじめとする欧州血統の繁殖牝馬が多く配されていた。

実際、サンデーサイレンス産駒のGⅠ馬の多くは、母系にリファールをはじめとする 欧州血統 を持っている。

これは、父サンデーサイレンスのスピードと瞬発力に、母系のスタミナと底力を加えることで、クラシック距離でも能力を発揮できる競走馬を生み出そうとした、日本の生産界の配合思想を示すものでもあった。

その意味でディープインパクトの配合は

アメリカ的なスピードを持つ父系
ヨーロッパ的なスタミナを持つ母系

という、異なる血統的特徴が高いレベルで融合した構造になっている。

このような配合は、日本の芝中長距離競馬において理想的な能力バランスを生み出しやすく、ディープインパクトの圧倒的なパフォーマンスを血統面からも裏付けるものとなっている。

このようにディープインパクトの血統は

日本競馬を代表する大種牡馬サンデーサイレンス
そして
Highclereに連なる欧州屈指の名牝系出身のウインドインハーヘア

という組み合わせから生まれた。

母系には Lyphardのスピード
Bustedのスタミナ が流れ、
さらに Highclereに連なる名牝系の質 が加わる。

これらの要素が重なったことで、
ディープインパクトという競走馬は誕生した。

その意味で、この配合はまさに

「ベスト to ベスト」

と呼ぶにふさわしいものだったと言える。


ここまで見てきたように、
ディープインパクトの血統は
極めて完成度の高い配合である。

ただし、

「良い血統=成功する種牡馬」

とは限らない。

なぜディープインパクトは
ここまでの成功を収めたのか。


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